大判例

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東京高等裁判所 平成8年(行コ)139号 判決 1997年9月09日

控訴人

東日本旅客鉄道株式会社

右代表者代表取締役

松田昌士

右代理人支配人

石田義雄

右訴訟代理人弁護士

秋山昭八

平井二郎

鵜澤秀行

被控訴人

中央労働委員会

右代表者会長

山口俊夫

右指定代理人

花見忠

福地靖

齋藤文昭

瀬野康夫

被控訴人補助参加人

国鉄労働組合東日本支(ママ)部

右代表者執行委員長

小沢孝

被控訴人補助参加人

国鉄労働組合東京地方本部

右代表者執行委員長

高橋義則

被控訴人補助参加人

国鉄労働組合東京地方本部関東地方自動車支部

右代表者執行委員長

田淵正雄

右補助参加人ら訴訟代理人弁護士

宮里邦雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴人の申立て

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が、中労委平成元年(不再)第八四号事件について平成六年一一月三〇日付でした命令を取り消す。

三  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

第二事案の概要

一  本件は、控訴人の自動車事業部総務課長が、被控訴人補助参加人国鉄労働組合東京地方本部関東地方自動車支部の東京自動車分会執行委員長宅において、同人に対し、国鉄労働組合からの脱退勧奨をしたとして、被控訴人ら補助参加人らが、労働組合法七条三号に該当する不当労働行為であることを理由に救済命令の申立てをしたところ、初審が救済命令を発したので、控訴人が再審査の申立てをしたが、被控訴人がこれを棄却したため、控訴人が、右再審査申立棄却の命令の取消を求めている事案である。原審は、控訴人の請求を棄却した。

二  当事者間に争いのない事実、当事者が明らかに争わない事実及び証拠によって容易に認めることのできる事実は、次に付加訂正するほかは、原判決摘示の前提となる事実(原判決四頁八行目(本誌七〇五号<以下同じ>58頁1段19行目)から同一三頁末行(59頁3段17行目)まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六頁九行目(58頁2段29行目)から一〇行目(58頁2段30行目)の「自動車」を削る。

2  原判決七頁七行目(58頁3段15行目)の「地方労働委員会」の前に「栃木県」を加え、同七頁八行目(58頁3段17行目)の末尾に「栃木県地方労働委員会は、いずれの申立てについても、控訴人の不当労働行為を認定して救済命令を発したので、控訴人が被控訴人に対して再審査の申立てをしたが、いずれの申立ても棄却された(<証拠略>)。」を加える。

3  原判決八頁七行目(58頁4段4行目)の「田淵正男」を「田淵正雄」に改める。

4  原判決一〇頁一行目(59頁1段3行目)の「翌三一日」を「同日」に改める。

三  本件の争点、争点に関する当事者の主張は、次に付加するほかは、原判決摘示(原判決一四頁一行目(59頁3段18行目)から同一七頁六行目(60頁1段25行目)まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一四頁九行目(59頁3段31行目)末尾に「花崎課長は、初めて古家の自宅を訪れたのであり、その場所や構造がどのようであるか、また、他に誰がいるのかも分からなかったのであるから、同課長が、そのような場所で、組合からの脱退勧奨と非難されかねない言辞を不用意に弄したなどということは到底考えられない。」を加える。

2  原判決一五頁末行(59頁4段25行目)末尾に行を改めて

「(三) 花崎課長が古家宅を訪問した当時は、二人乗務問題は未だ解決した問題ではなく、控訴人は、新路線の開設を予定していた関係で、将来的には二人乗務制を採用することが不可避であったのに対し、国労は引き続きこれに対する反対闘争を続けていたという状況にあったのであるから、同課長が、古家を訪ねて、二人乗務問題についての理解を求めることには大きな意義があったのである。」

を加える。

第三争点に対する判断

一  当裁判所も、本件命令の認定及び判断は正当であり、本件命令には控訴人主張の違法があるとは認められないと判断するものであり、その理由は、次に付加訂正するほかは、原判決理由説示(原判決一七頁八行目(60頁1段27行目)から同二三頁八行目(87頁4段11行目)まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二一頁一行目(60頁4段11行目)の次に行を改め

「さらに、証拠(<証拠・人証略>)によれば、古家は、本件に係る不当労働行為救済申立事件において、東京都地方労働委員会に対し、昭和六三年一〇月二〇日付陳述書(<証拠略>)を提出したこと、右陳述書には、花崎課長が古家宅を訪れた際には国労から抜けてもらわなくては困るという話はなかったとの記載はあるが、古家が国労の組合員に対して花崎課長から脱退勧奨を受けたと述べたこと及びそのような供述をした理由について説明した部分はないこと、古家は、二度にわたる同委員会からの証人としての呼出しに対しては都合が悪いと言って出頭せず、かつ、出頭の意思もない旨を書面で提出したこと、ところが、古家は、原審において証人として出頭し、右不出頭の理由を尋ねられたところ、右陳述書の提出をもって十分であると判断したために出頭しなかったと述べたが、その証人尋問において、初めて、国労から脱退する口実として花崎課長の訪問を利用した旨供述するに至ったことが認められるところ、古家が、花崎課長による脱退勧奨の事実の有無をめぐって激しく争われた東京都労働委員会の証人尋問期日に出頭しようとしなかった理由として述べるところは変転しており、また、それ自体としても不出頭の理由として納得しうるものではないのであって、このような古家の陳述書の提出及び供述に至る経緯に照らすと、その信用性には疑念を差挟まざるを得ないというべきである。」を加える。

2  原判決二一頁八行目(60頁4段25行目)の「<証拠略>」を「<証拠略>」に改め、同二一頁九行目(60頁4段26行目)の「証言をする」を「証言をし、また、その作成名義に係る陳述書(<証拠略>)においても同旨の記載がある。」に改める。

3  原判決二二頁末行(87頁3段23行目)の「いうほかない。」の次に「これに対して、控訴人は、花崎課長が古家宅を訪問した当時は、二人乗務問題は未だ解決した問題ではなく、控訴人は、新路線の開設を予定していた関係で、将来的には二人乗務制を採用することが不可避であったのに対し、国労は引続きこれに対する反対闘争を続けていたという状況にあったのであるから、同課長が、古家を訪ねて、二人乗務問題についての理解を求めることには大きな意義があったと主張し、証拠(<証拠略>)中にはこれに沿う部分がある。しかし、控訴人の主張するような二人乗務問題を巡る状況があるとはいっても、本社の総務課長が、現場の自動車営業所に所属する分会の執行委員長で、特に面識もない古家の自宅を、現場視察の帰途とはいえ、わざわざ訪問する理由があるものとは思えないし、また、古家が、新聞に二人乗務問題に関して、バス内の仮眠室設置に反対する批判的談話を載せたことがあるからといって、報道から二か月以上もたった時期になお、本社の総務課長が現場の一介の従業員に対し、その談話内容の当否について説明と理解を求める必要のある状況にあったなどとも考えられないところである。前記のとおり、当時二人乗務制に反対していた国労は、会社に対して団体交渉を求めており、このような団体交渉は、国労本部と本社などとの間で行われるものであって、分会が使用者側と交渉して解決する問題ではなかったのである(<証拠略>)。」を加える。

4  原判決二三頁二行目(87頁3段28行目)の「証言」の次に「及び前記陳述書の記載」を加える。

5  原判決二三頁三行目(87頁3段31行目)の末尾に行を改め

「また、控訴人は、花崎課長は、初めて古家の自宅を訪れたのであり、その場所や構造がどのようであるか、また、他に誰がいるのかも分からなかったのであるから、同課長が、そのような場所で、組合からの脱退勧奨と非難されかねない言辞を不用意に弄したなどということは到底考えられないと主張するが、同課長がそのような言辞を弄したことを示す前掲各証拠に照らすと、右主張は採用することができない。」

を加える。

6  原判決二三頁八行目(87頁3段9行目)の「労働組合法」の前に「会社がその職制を介してした」を加える。

二  右認定判断によれば、控訴人の本件請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。よって、控訴費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 小林亘 裁判官 佐藤陽一)

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